映画ドラえもん
のび太と翼の勇者たち
長編『のび太と翼の勇者たち』、短編『ドラミ & ドラえもんズ/宇宙〈スペース〉ランド危機イッパツ!』と『がんばれ! ジャイアン!!』を加えた豪華 3 本立て。恥ずかしながら、劇場版『ドラえもん』を見るのは初めてである。
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「ドラミ & ドラえもんズ
/宇宙〈スペース〉ランド危機イッパツ!」
ドラミ & ドラえもんズが、スペースランドに行ってみれば、なんだかおかしなことになっている。どうやら「宇宙ウィルス」に犯されているのだ。ドラミ & ドラえもんズがウィルス退治に奮闘する。だからどうした?
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「がんばれ! ジャイアン!!」
短編ながら、力のこもった名品。ジャイアン初主演作ということで、各方面から大きな期待がかけられていたが、見事重責を果たした。
ジャイアンの妹ジャイ子はマンガ家志望にて、「やーい、目ン玉に星キラキラのマンガ描いてやがるー」とジャイアンに囃し立てられていたのだが、同じくコツコツマンガを描いている茂手(もて)モテ夫と出会い、幼い恋に落ち、モテ夫と同人誌を出すことに。妹の気持ちを知るや、ジャイアンは猛然と兄貴としての自覚に燃え、妹の恋と創作を全面的に支援する決意を固めるが…、というお話。
どうも時代設定は『ドラえもん』の連載が開始された昭和 40 年代あたりに設定されている。三本見終わってから気がついたのだが、『ドラミ & ドラえもんズ』は幼児向け、メインの長編は児童向け、そしてこの『がんばれ! ジャイアン!!』は、大人向けに作られている。劇場版『ドラえもん』の、安定した動員は、こういう三本の役割分担にあるのだろう。
短時間・スピーディに『ドラえもん』らしい物語を展開、演出もやたらとダイナミックであり、お約束の展開とは言え、妹のために奮闘するジャイアンの姿に涙を禁じ得ない。
本来悪役であるべきジャイアンにも妹を思う心があった、というのがポイントであるから、ジャイアンの悪役ぶりを前半でもっと強調すべき、ではある。ちょっと惜しいがオススメ。
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「ドラえもん
のび太と翼の勇者たち」
『ドラえもん』といえば、ものぐさ/ボンクラ=のび太くんが、ドラえもんの発明品で要領をかまそうとするが、テクノロジーにしっぺ返しを食らわされる、というのが黄金パターンであろう。
根底には、70 〜 80 年代の時代精神=環境汚染や核兵器開発競争が問題になった末の、科学技術に対する不信がある。今回の劇場版でも、まず鳥たちが環境破壊によって被害を被っている姿が描かれる。時空の穴を通ってのび太、ドラえもん一行は、「鳥人間」が支配する別の世界へ。そこでなんだかんだあって、危機に瀕した鳥人間世界を救う、という話なのだが、問題はドラえもんの発明品の扱いだ。
ピンチに遭遇、唐突にポケットから取り出される発明品で回避、と言うパターンであり原初『ドラえもん』が持ち得た、「テクノロジーも使い方こそが肝要だ」というメッセージは完全に喪失している。いわば、最近の 007 シリーズでの新兵器と同じなのだ。この発明品の余りに軽すぎる扱いは、ソ連型社会主義の崩壊、バブル資本主義の栄華が反映しているのだろう。とにかく発明品を消費せよ! これが新世紀のび太に与えられた使命なのである。だが、これでは話がおもしろくなることはなかろう。なんとか世紀を越えはしたものの、『ドラえもん』とは何物か? を問い直さなければ、やがては尻すぼみに終わるであろう。
とはいえ、上映館では子供さんが「お母ちゃん、お母ちゃん」とか「ほげー」「ほげー」など意味不明にギャアギャア騒いでいても、物語がそれなりに盛り上がるところではピタリと静まる。観客と映画が一体となる。これが映画なのだ。オススメ。
BABA Original: 2001-Mar-27;