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Movie Review 2000・9月15日(FRI.)

ハリウッド・ミューズ

 主人公は「最近エッジがきいてない」と契約をうち切られてしまった映画脚本家。ああ、オレもついに才能が枯れてしまったか、家族も養わにゃならんのにどうすればいいのだ、と途方にくれていたところ、最近好調の脚本家仲間がミューズ(=美と創造の女神)を紹介してくれる。ハリウッドのヒット作の影にはシャロン・ストーン演じるミューズがいたのだった! ガーン。

 さっそく会ってみると、シャネルのプレゼント持参でないので門前払いされたり、超高級ホテル(らしい)フォー・シーズンズ・ホテルのスイートでなきゃあ仕事ができないとのたまわれたり、夜中にナントカサラダが食べたいのよルームサービスは終わってるのよなんとかしてよと無理難題をふっかけられたり。

 そりゃあヒット作が書ければいいけど、出費はどんどんかさむばかり…という物語のアチコチに業界ネタを散りばめた愉快なコメディ、なんだが、いくらシャロン・ストーン主演といってもよくぞ日本で公開されたものよなあ、という小品、って実際、初日の弥生座 2 では客はボクも含めて三人なり。やれやれ。しかし、これって、ひょっとして…?

 この「ミューズ」。努力だけではなんともならない漠然とした不安をいだき、大金をそそぎこんで不思議な力にすがろうとするってのは、新興宗教の信者を彷彿とさせる。ファビラス・バーカー・ボーイズの『映画秘宝 地獄のアメリカ観光』を読むと、トム・クルーズ、その妻ニコール・キッドマンらビッグ・スターが「サイエントロジー」なる「新興宗教」にはまっているらしい。教組(?)は L ・ロン・ハバートなる SF 作家で、同じくズッポリはまっているジョン・トラボルタが映画化した『バトル・フィールド・アース』の原作者らしいぞ。

 すなわちこの『ハリウッド・ミューズ』、そういう宗教に走りがちな芸能人を暗に皮肉っている、のでは? 教組=ミューズのゴキゲン取りに狂奔し、わがままいってるだけなのになんとなーくありがたいご託宣と受け取る小市民的業界人の姿を見て、アメリカ人は大笑いしているのかも知れない。ジェームズ・キャメロン、ロブ・ライナー、マーティン・スコセッシら売れっ子監督が、本人としてホイホイ出演しているが、新興宗教を苦々しく思ってるからか? 憶測ですけど。

 監督・脚本は『サタデーナイト・ライブ』で脚本・演出を手がけたアルバート・ブルックスが主演も兼ねる。ぬるめのコメディであるが、業界ネタ満載ではあるし、勢いがあるラストはすばらしい。それなりに映画好きの方にはオススメ。

BABA Original: 2000-Sep-15;

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