ロミオ・マスト・ダイ
『ダイ・ハード 4 』『リーサル・ウェポン 4 』で軽くメル・ギブソンを痛めつけてウォーミング・アップした後、リー・リンチェイ(aka
ジェット・リー)の、満を持してのアメリカ映画本格主演作。製作は『エグゼクティブ・ディシジョン』のジョエル・シルヴァー。彼にリンチェイを紹介したのはウォシャウスキー兄弟で、当初、『マトリックス』に出てもらいたかったらしいがかなわず、とりあえず『ダイ・ハード
4 』に出演、遂に主演作、ということらしい。
オークランドの港に誘致するスタジアムの利権を巡って、中国系マフィアと黒人マフィアの対立が激化。中国人ボスの息子が殺される。この知らせを聞いた兄=リー・リンチェイは、香港の刑務所を脱走してアメリカへ。ひょんなことから黒人娘と知り合うのだが、彼女は黒人マフィアのボスの娘だった…。
と、いうことで、なんじゃい、『ロミオとジュリエット』が物語のベースけ? と思うが、悲恋で引っ張るわけでもなく、どうでもいい味付けだ。題名は「色男は死にさらせ」ってな意味です。
香港クンフースターのアメリカ進出、まずは、クンフー好きの黒人がターゲットだぜ、との戦略からか、全編にヒップホップが流れ、白人がほとんど出てこない、というのが痛快。
が、監督・脚本家が、あまり頭を使っていない。リンチェイ登場までの、発端がたらたらしててダメだし、アクションも、カットをチョンチョン割るアメリカ流の演出で、素材を生かしていない。なんでもかんでも同じ味付けにしてしまうアメリカ料理みたいな。クンフーは、いわば舞踏だから、カメラは引き気味、俳優の身体全体をとらえなければならぬ。もっと香港映画を見て研究したまえ、と私は言いたい。致命傷を与える瞬間、CG で骨がグキグキいうのを見せる、というのも、アメリカ人はキャッキャ言って喜ぶだろうが、世界では通用せんぞ。
また、リンチェイのキャラクターが東洋人から見ると、奇妙である。クンフーの達人であるが、そもそも達人とは、争いを避け、無闇にワザを見せびらかさないものだ。やんごとなき事情でワザを振るわざるを得ないシチュエーションにいかにして巻き込むか、というのが演出の腕の見せ所であろう。しかるに、この映画のリンチェイは、タクシーは盗む、黒人娘にちょっかい出す、フットボールでは蹴りを入れたりと、好き放題の暴れぶりで、結構ムカつくただの乱暴者なのだ。このような行動を取る者は達人と言えず、よって、なぜリンチェイがかように強いのか、の説明がつかない。スゴイ技は、それなりの精神の持ち主にしか宿らない、というのが東洋流であるが、アメリカでは阿呆でも強いヤツは強いのだ、とされているのだろう。アメリカ流合理主義の限界が表れていると言えよう。
と、適当なことを書いたが、リンチェイ最高! であることに変わりはない。まずは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』がオススメ。
BABA Original: 2000-May-25;
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