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Movie Review 2000・3月13日(MON.)

月光の囁き

 漫画が原作の映画といえば、最近ですと『ねじ式』とか『鮫肌男と桃尻女』等が記憶に新しいところですが、またとんでもない傑作が出てきましたよ!

 原作を全く知らない人は何の予備知識も無いでしょうから(僕もそうでした)簡単に説明すると、高校の剣道部で、何となく好意を持ち合っていた男女がとあるきっかけで交際を始める訳なんですが、男の子の方は、付き合う以前から彼女の使用済みティッシュやロッカーからこっそり拝借したルーズソックス、更にはなんとトイレの盗聴テープ(!)まで持っていてそれで密かな思いを慰めていたわけです。しかし交際が始まってからも、表向きの爽やかなおつきあい(結構ここら辺の描写が何とも心のひだをくすぐったりもする)とは別に、自らのフェティシズムをどうしても抑えきれなかったりするんですね。そしてそれがバレてしまう! 当然女の子は激怒! 交際も終焉をつげる…はずなんですが、ここで新たな関係が芽生えてしまう。つまりと言うか何というか、S= 女の子、M= 男の子と言う図式ができあがってしまうのです。

 何のことか見てない人には解りづらいでしょう。話だけ聞いていると、とんでもないヘヴィな映画にもおもえるでしょう。確かにヘヴィな部分と言うのはあることはあるのですが、実はすごくまっとうな青春娯楽映画に仕上がっているのです。

 誰にでも、人には言えない内緒事があるはずで、それは例えばこの映画のように性癖の一種だったりもするはずで、それは仕方ないことというか、当たり前のことだとも思えるのです。そしてそれを人に告白する必要も必ずしも無いはずです。ところがもし、この内緒事を相手がたとえ表向きには嫌がっていたとしても、受け入れてくれることがあるとしたら! 誰にも言えなかったことを安心してぶちまけられる人が出現したとしたら!

 少々危ういことかもしれませんが、これはすごい快楽ではないでしょうか。

 この映画は、まだ十代の身の上で、この事態に遭遇してしまった、幸と不幸の狭間で揺れる心象を見事に描ききった傑作と思えるのです。好き嫌いは別にしてね。いかようにもとれるラストシーンも秀逸。題材の割には妙に開放感に溢れたまれな映画です。監督は「どこまでもいこう」で各賞総なめ気味の塩田明彦氏。

 この春オススメの映画だと思いました。3 月 22 日(水)よりみなみ会館でロードショーです。

kawakita Original: 2000-Mar-13;

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