ジュブナイル
さて、東宝系 SF 映画といえば、かつては世界に冠たるものであったが、最近では『ゴジラ』とかさ、子どもさん向きの激ショボ特撮の連続で、心あるマニアを嘆かせつつ、「いーや、糸で吊ってああいう動きが出来るのは日本だけだ」というようなワケのわからない擁護論をぶつ人(誰)もいたり。
本作は、東宝系公開であるが、制作の主体は CG を使った特撮ではそこそこ実績がある「白組」。監督は「白組」でゴリゴリ特撮をやっておった山崎貴、という人。脚本、特撮監督も兼ねている。特撮シーンとそれ以外でタッチが違うぞなもし、てなこともなく獅子奮迅の働き。センスのある特撮という点で、平成『ガメラ』シリーズに続く日本特撮映画のニューウェイブと言えましょう。
「ジュブナイル」、とわざわざ「少年少女向け」と銘打つからには、少年少女向けなのであって、ワシのようなオッサンがどうこう言う筋合いではないのだけれど、オッサンが見ても「いけてるやん」と思う。子どもさんが見れば、大いに感動するはず。と、いうのもお話は、藤子不二雄的タイムトラベルをからめ、ちょいとドラえもんかも? って感じの「SF ファンタジー」。
オッサンからすれば、ああ、これは手塚治虫の『ジャンピング』、ニョッと来るのは『寄生獣』かも? と、あれやこれやと元ネタが思い浮かび、あれこれ引用するのは良いのですけどね、オタクっぽいんですよね、オリジナリティも欲しいよね、とスかした感想のひとつもいいたくなるところ、されど、スれていない子どもさんなれば、数々の特撮に眼を見はること必至。舞台は、海辺の小さな漁村、日常の光景を丁寧に描いており、ひなびた商店街を「ガンゲリオン」なるロボットが疾走するシーンなどスペクタクルも素晴らしく、ワシも驚いた。
特撮の処理に優れ、お話も良くできており、電気屋の前でテレヴィを見続ける酒井美紀などヒューモアあふれる演出も良し。しかし、苦言を呈するならば、キャラ立ちが弱い。ただ一人、SMAP の香取慎吾は持ち前のキャラクターの助けもあって、その辺克服されており、慎吾ちゃんが出ている場面はイキイキと躍動するのだが、肝心要の主人公、少年少女のキャラが立っておらず、ストーリーがただ進行するのみ。エピローグに登場する吉岡某、緒川某のデクぶりも萎える。ともあれ、この痛いエピローグを除けば、なかなかオススメ。
BABA Original: 2000-Jul-20;
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