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Movie Review 2000・12月10日(SUN.)

ピッチ・ブラック

 お、なんだ、こんな映画知らんぞ、ここまで全然知らんのは高度情報化社会の世の中に希有なことじゃ、と意味不明の題名だけが前知識の状態で見たためか、たいそうおもしろく見ることができた。映画というものは中身をまったく知らない状態で見るのがいちばん! との確信を強める。

 未来のお話。星間旅客船が事故を起こして謎の惑星に不時着する。男女数名が生き残る。そこはなんと太陽が 3 つあって、夜が存在しない星。巨大な恐竜のものだと思われる白骨があるが、特に危険はないように思える。しかし、地面の下に洞窟があって、光を怖れる謎のモンスターがいたりして。さて、男女数名の運命やいかに?

 演出は、MTV 的でダサイことはなはだしいが、ごく一部モノ凄いヴィジュアルが見られる。地球以外の惑星の、想像を絶する風景。アドレナリンが吹き出ました。

 脚本がなかなかよろしい。年中昼間の惑星なので、地面に開いた穴ぼこに近づかなければ光を怖がるモンスターに襲われることはないのだけれど、アッと驚く落とし穴があって、思わず「なるほどねぇ」とうなりました。

 キャラが立っているのもいいぞ。乗客に護送中の「凶悪犯」がおり、そいつがナイフを持って逃げ出してウロチョロする、というのが前半のサスペンスなのだが、って演出がモッサイから脱力することはなはだしいけど、そいつが実は…っていうと「善人」だった、というような単純な話ではなく、高い知性を誇り、暗闇を見通す目を持つ、善悪の彼岸を超越した超人風思想の持ち主なのだった。強い意志を持つ者だけが生き残る資格があるのだ、というお話。こういう倫理観はアメリカ映画には珍しかろう。

 監督は『ウォーターワールド』『エイリアン 3』の脚本を手がけた…ってダメ感ただようデヴィッド・トゥーイって人。SF オタク。なので SF オタクの方は必見。出てくるのは馴染みがない俳優さんばかり。「凶悪犯」を演じたヴィン・ディーゼルは『アイアン・ジャイアント』の声を担当したらしいぞ。うひゃあ! モンスター・デザインは『GODZILLA』のパトリック・タトポロスが担当、ってことぐらいしか売りがないのによくぞ劇場公開したものです。案の定、初日最終回京極東宝 1 の観客は約 3 名。うははは。

 で、結局ピッチ・ブラックとは何なのかわからず仕舞いだったのだが、なんだったのでしょうか? ぜひ、あなたの目で確かめてほしいのでオススメだ! ってきっと誰も見に行かない気がします。やれやれ。

BABA Original: 2000-Dec-10;

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