フンデルトヴァッサー展
[アート]
京都国立近代美術館に「フンデルトヴァッサー展」を観に行く。私が初めて“フンデルトヴァッサー”の名前を知つたのは、「迷宮の魔術師たち」種村季弘著(求龍堂)においてであつた。そこに素描されてゐた“渦巻き”の画家に興味を持つた私は、その後も様々なところでチョイチョイと彼の絵を見ては「いいなー」と思つてゐた程度だつたのだけれど、今回、このやうな大規模な展覧会に行つて、今まで知らなかつたこの画家の全貌を垣間見ることができ、激しく感動したのであつた。やはり彼は、私好みのアーティストであつた!
私好みのアーティスト、とはどのやうな人なのか。それは、まァ、全身アーティスト、といふか、生きることそのものと、その人の芸術活動が通じてゐる人のことである。フンデルトヴァッサーは、“人間は5枚の皮膚を持つてゐる”といふ独自の理論を持つてゐて、それに沿つて活動してゐた(2000年に逝去)。1枚目の皮膚はもちろん普通に我々の身体の表面にある奴のことだが、2枚目は衣服、3枚目は住居、4枚目は人間関係(家族・友人・社会・国)、5枚目は地球環境のことだといふ。これら全てを、20世紀を覆つてゐる合理主義・全体主義・グローバリズムなどの病理から解き放つことが、フンデルトヴァッサーの活動なのだ。だから彼は、衣服は自分で作り、住居の設計もやり、EUに反対するなど政治活動もやり、環境保護運動にも携はつてゐた。そして、それら全てを象徴するのが、彼の描く絵なのである。
むろんこの展覧会に展示されてゐるのは絵がほとんどだが、彼の設計した建築の模型もあり、また彼の活動を撮つたドキュメント映画(面白い!)も上映されてゐる。そのやうにして、簡単ながら彼の全貌が垣間見えるやうになつてゐるのである。うーむ、良い展覧会だ。
生きる事とは闘争である。闘争とは創造することである。そしてそれこそが“芸術”ではないか、などと私は思つた訳です。
てな訳で、これはオススメ。興味の湧いた方は是非! 21日(日曜日)まで。
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