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Text by 小川顕太郎
2006年02月25日(Sat)

肥だめ
etc

 テラリーが泣いてゐた。これは、よほど大学院に受かつたのが悲しかつたのか、と思ひ、そんなに悲しいのなら大学院なんて行くのやめてニートでもやつたら、と私が提案すると、「悲しくありません! これは花粉症です」と答へた。

 なんだ、花粉症か。テラリーは田舎育ちなのに花粉症なのか。実家にゐた頃から?

「さうです。姉はアレルギーでしたし。」

 うううむ、さうか。でも、肥溜めに落ちたら花粉症にならない、といふ話を聞いたぞ。テラリーも何度か肥溜めに落ちてゐるだらう。

「落ちたことありませんよ! そもそも、肥溜めなんてなかつたです。トイレは汲み取りでしたけど。」

ぢや、トイレには何度か落ちてゐるだらう。

「落ちてません」

 ふーん、ぢやあ、今度実家に帰つた時に落ちてみれば? 花粉症がそれで治るかも。

「いやー、それは一寸…」

「あ、さうさう。確か山野一のマンガで、高慢ちきなお嬢さんが肥溜めに落ちた事によつて悟りを開いて菩薩のやうになる、といふのがあつたわ。テラリーも悟りが開けるかも」と、トモコ。

「いえ、遠慮しておきます」

 なんだテラリー、若いのに全く冒険心がないな。そんな保守的なことで、これからどうするつもりだ。

「だからこそ、ボクは大学院に進んだんです」

 なるほど! 少し納得。

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