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Text by 小川顕太郎
2006年01月17日(Tue)

“百段階段”/ナプレ
旅行

 午前中に、目黒雅叙園にある“百段階段”を見学する。目黒雅叙園は、戦前には当時の粋を集めたバロックな料亭・宴会場であつた。ド派手、豪華絢爛、バロックな宴会場や部屋が200以上もあつたさうだが、戦災で焼けたり、その後の老朽化でボロボロになつたのを、80年代の後半にそのほとんどを取りつぶして、新しく作り直してしまつたのである。

 もちろん、再建後の雅叙園も派手でバロックだが、やはり昔の部屋が見てみたい! そんなお客さんの声に応へて、一部残つた部屋部屋を見せてくれるのがこの“百段階段”である。1億円以上するといふ螺鈿作りのエレベーターに乗つて、百段階段のあるところまで行く。そして、ホテルの人に引率されて、百段と言ひながら実は九十九段の階段を昇りつつ、その途中にある部屋部屋を見て歩くのである。なんともまァ、バロックな部屋たちである。天井には全て絵が描かれ、四方の壁には総木彫り細工、金銀螺鈿、槐の木の床柱、鏑木清方などの有名日本画家たちの手による絵……。約1時間ほどかけて見学。映画『千と千尋の神隠し』に出てくる“湯屋”のモデルになつたと言はれてゐるが、あの映画にはない猥雑さの夢の跡、みたいなものが漲つてゐて、「よし!」と思はず親指を立ててしまひさうになつた。

 お昼にチェックアウト。これから恵比寿に向かうのだが、どうにも荷物が重い。ううむ、これはやつてられない。なんとかならんもんか。なんとかなりさうなものだが…と、あたりを見回すと、お! これはこれはいいところに、ウノピョンぢやないか。

「あれ、ケンタロウさんたち、本当に東京に来たんですね」

 さうだよ。さ、ウノピョン、荷物を持つて貰おうか。

「え、別にいいですけど…。わ! 重た! …もしかしてケンタロウさんたち、ボクがここにゐるのを予測してゐました?」

 当たり前だよ。ウノピョン(ウノパイオン)なんて名前にするからだ。これで私もノーベル賞を貰へるかな。

 この後、ウノパイ中間子を連れて恵比寿の「ウエスティン」にチェックイン。ホテルそばの“東京都写真美術館”で“植田正治:写真の作法”展を見たり、六本木ヒルズなんぞをウロウロしてから、夜は表参道のイタリア料理屋“ナプレ”へ。ここは、さう、あのタカハシくんが働いてゐる店なのだ。

 あらかじめ予約をいれておいたので席はあつたが、2フロアある店内はギッシリと満席。忙しい、とは聞いてゐたけれど、ほんとに目の回るやうな忙しさだ。タカハシくんも挨拶に出てきたけれど、とにかく喋つてゐる間なんてない。が、色々とサービスはしてくれて、我々は赤ワインのボトルを1本あけたのだけれど、それ以外にも出てくるわ出てくるわ、シャンパンに始まり、レモンのリキュール、グラッパ、なにかのフォーティファイドワイン……。マネージャーの人もわざわざやつて来て、タカハシくんが如何に頑張つてゐるかを力説した後、「いくらでも呑んでください。足りなくなつたら、言つて下さい」と言つて、ドーンと何本もお酒の瓶をテーブルに並べてくれる。いくらでも呑んでよいと言はれても…。ウノピョンを交へて3人で、磁力と核力の違ひ、ヒップホップとソウルの違ひ、AボーイとBボーイの違ひ、などに関して談論風発しながら鯨飲馬食してゐたら、グデングデンに酔つ払つてしまひました。

 ま、サービスして貰つたからいふ訳ではないけれど、とても良い店。料理はおいしいし、お酒は豊富。なによりさういつたものがガンガンと食べ且つ飲める適度なカジュアルな雰囲気が、いい。イタリアンはかうでないと。タカハシくん、ご馳走さま。満足いたしました。

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