夢日記
[etc]
松枝清顕に倣つて、夢日記をつけてみる。
……私が道路を渡らうとすると、ヤマネくんが遠方から「危ないですよ!」と叫んだ。確かに信号は赤だつたのだけれど、左右を見てもクルマが来てゐる様子は全くないし、大丈夫ぢやないか、と思ひ、足を踏み出すと、ヤマネくんがさらに必死なる声で「ダメです! 危ないです! 死にます!!!」と声を振り絞るので、私もなんだか不吉な予感に襲はれてその場に立ち竦んでしまつた。
「あー! ダメです! 早く、退いてどいて!!」とヤマネくんが言ふので、そこから元の場所に戻らうとすると、足が道路にへばりついたやうになつてゐて動かない。さすがに私も真ッ青になつて、道路に寝ころんで手をつき、足を引きずるやうにして必死になつてその場から動き始めた。「あー!! 早く、早く!!!」とヤマネくんは相変はらず言ふのだけれど、なかなか身体は動かなくて、脂汗がしとどに流れ落ちる。少しづつ、少しづつ、道路を這つて元の場所に戻ろうとする。それにしても、やはり左右の道を見ても、クルマが来てゐる様子はない。本当に危ないのだらうか、と疑問を抱きながらも、ヤマネくんがあそこまで確信を持つて言つてゐるのだから、きつと何か根拠があるのだらうと、渾身の力を込めて道を這ひ続ける。痺れた足が猛烈に重い。歯を食ひしばり過ぎて、口の中が痛い。やうやく、なんとか、車道から出ることができた。ホッと息をついた瞬間、「ああああー!!! もう、ダメだー!!!」とヤマネくんが絶望の声をあげたので、私は生まれて以来最大級の恐怖感に包まれ全身が総毛立ち、喉から奇妙な雄叫びをあげながら身体を仰け反らして横にゴロゴロと転げると、もの凄い勢ひで前から突つ込んできた鋼鉄製の猫が、私のすぐ真横を通りすぎていつた。
間一髪の事態に茫然とする。と、ヤマネくんがすぐ側にやつて来てゐて、「いやー、危なかつたですねー。これからは道路を渡る時は、左右だけぢやなくて、ちやんと前も確認しないとダメですよ。あ、それからクルマだけでなく、猫にも気をつけてくださいね!」と言つたので、私は、そんなこと考へた事もなかつた、と呟いたのであつた。……
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