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Text by 小川顕太郎
2005年11月01日(Tue)

映画版『春の雪』
映画

 TOHOシネマズ二条にて、トモコが『春の雪』(行定勲監督)を観てきた。『春の雪』とは、もちろん三島由紀夫の大傑作『豊饒の海』4部作の第1作の『春の雪』のことである。この傑作小説の映画化なのだ。私はこの小説の映画化を知つた瞬間から、しかも監督以下主要な俳優陣の名前を知つた時から、うわー、止めてくれー!! と頭を抱へてゐたのだけれど、しばらく前からこの映画の予告編が流れるやうになり、それを観た時は完全にブチ切れてしまつた。酷い! 酷すぎる!! 予告編で観る限り、原作と正反対の作品になつてゐるやうに思へる。周りの事情により引き裂かれる愛し合ふ二人…みたいな感じの宣伝がなされてゐるのだが、『春の雪』はそんな話ぢやない。といふか、さういふ通俗メロドラマを皮肉り、批判する話なのだ。無論、映画は原作通りに作らなければならない、といふ事はない。が、正反対といふのはどうか。ま、これは一応予告編なので、予告編なんて嘘ッぱちだらけな訳だし、本編を観るまでは分からないけれど…。

「酷い。ホントーに、酷い映画だつたわ。何度も映画館を出やうと思つた。辛かつた」

 とトモコ。

 やはり。で、話はどうなつてゐたの。やつぱり、怖れてゐた通り?

「いや、それが意外な事に、一応ストーリーは原作をなぞつてゐるのよ。引き裂かれる二人、ぢやなく、ちやんと松枝清顕(妻夫木聡)が自ら引き裂くやうに描いてある。でも、多分ちつとも原作の事を理解してゐない。なぜ清顕がそんな事をしたのか、をチットモ分からずに描いてゐるから、もの凄く気持ち悪い。…でも! そんな事より何より、主役の二人を筆頭に、役者の人たちが酷すぎる! これは戦前の貴族社会の話ぢやない、それなのに、みんなちつとも品がない。中小企業の社長やカルチャークラブに通ふ有閑夫人みたいな人がゾロゾロ出てくる。特に清顕は優美の化身として設定されてゐるはずなのに、妻夫木くんは粗野で下品。まるで正反対! さらに聡子役の女優さん、私はよく知らない人だけれど、あまりパッとしないのよ。で、また妻夫木くんに較べて顔が大きい! 二人が顔を寄せ合ふシーンは、とつても変! 何も考へずにキャスティングしたとしか思へない。…筋運びもまるでダメで、退屈で死にさうだし、映画そのものの作りも粗雑。だつて、宮様の着てゐる軍服に皺が寄つてゐるのよ! 首のところに!! あり得ない。こんな映画、衣装に手を抜いてどうするんだ!!!」

 うーん、予想通りだな。でも、よく我慢して最後まで観たね。

「それがねェ、一人だけ、凄くビックリするやうな人が出てゐて、その人が観たいばかりに、最後まで観てしまつたのよ」

 え! 誰?

「歳をとつてゐて、最初は分からなかつたんだけれど、キレイな人だなー、と思つて観てゐて、途中で、‥あ! 若尾文子だ! ッて気がついて」

 えええー!!! 若尾文子が出てゐるのー!!!

「もうダントツに良かつたわよ。そりゃ」

 うわー! 観たい観たい観たい! 若尾文子観たい! でも…映画は観たくない! どうすればいいんだ!!!

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