WHITE CHICKS(最凶女装計画)
[映画]
DVDで映画『WHITE CHICKS(最凶女装計画)』を観る。これは、ババさんのレビューにもあるやうに、今年のアカデミー賞の時に並み居るアカデミー候補作品を押しのけて、庶民(マジック・ジョンソン・シアターに集ふ人々)の圧倒的な支持を受けてゐる、と(クリス・ロックによつて)証明された作品である。その事を知つて以来、観たい! 観たい! と思ひ続けてきた訳だけれど、実を言ふと心の底では少々舐めてゐた。どうせアホなアメリカ人が喜んで観る、アホアホでお下劣な映画なんだらうなー、と。それを観て、アメリカ人のアホさ加減を嗤つてやれ! といふ底意があつたのも事実である。が、アホなのは私の方であつた。これは、恐るべき傑作映画だつたのだ!
いや、アホでお下劣な映画であるのは間違ひない。まづ、黒人男性二人が白人セレブ女性(モデルはヒルトン姉妹)に変装して成りすます、といふ発想からしてアホアホであるが、次々に繰り出されるギャグもかなりバカバカしく、且つお下劣で、顎が外れさうになる。が、結構こんなギャグにも丁寧に伏線が張つてあつて、構成もなかなか練られ、古典的とさへ言へるスタイルを持つた作品なのだ。黒人と白人、男性と女性、さらに一般人とセレブ、といふ三つの壁を自在に超え、それぞれの価値観を笑ひのめすのも良い感じだし、だからと言つて価値相対化に陥るでもなく、セレブたちの軽薄・淫乱・破廉恥に対して、主人公たちの少々ドジではあるが真摯で誠実な様をぶつけ、密かにスノッブ批判をする気骨も持ち合はせてゐる。また音楽に対するセンスもなかなかで、冒頭のヒップホップ(サイプレス・ヒルか?)からしてメッチャ格好いいし、随所に挟まる音楽も、各人の文化背景を表したりして笑ひを誘ふやうになつてゐて最高だ。特にダンスバトルのシーンは、明らかにデスチャ『ルーズ・マイ・ブレス』のPVのパロディだが(音楽はビヨンセ『クレイジー・イン・ラブ』)、白人女性たちによつて行はれるそれは抱腹絶倒もの! そこに主人公の二人(白人女性に化けた黒人男性)が現れて、「キック・ダ・オールドスクール!」と叫ぶと、音楽がRUND.M.Cに変はり、彼(女)らは……。と、完全にお約束の展開だが、最高すぎてひッくり返つてしまひました。
とにかくこれは、今年観た映画の中で最高の1本。年末のベスト10には入れられないけれど(DVDなので)、私の裏ベスト1である! とここで宣言しておきませう。
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