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 Diary 2005年7月15日(Fri.)

チンエン

 ババさんと共に、私が先日やつと読み終へた大西巨人著『深淵』について、「最高!」「傑作!」「爆笑!」「愕然!」「納得!」などと話し合つてゐたら、そこにハッシー & YO!ちやん来店。「お! ハッチーやん、ハッチー」とババさんが声をかける。

「でも、“ハッチー”ッて言ひにくいから、“ハッチ”とかにしやうかな。な、ハッチ!」

「止めてください! もつとイイあだ名にして下さい。カッコイイやつ。」

「う〜ん、例へばどんなん?」

「フランス、とか」

「へ? そんなんでいいの?」

 まァ、まァ、ハッシー、先に注文したら。

「あ、はい、えー、ぢや、ラッシーで。」

 はい。ハッシーはラッシー、と。…もしかして、それ、シャレ?

「ち、違ひますッて。あ、あ、今、祭行つてきたんです。凄い人ですよ! ほんで、夜店の人に『ヤンキーにからまれんやうに気をつけや』と言はれました」

 確かに、祭はヤンキー天国だからね。ババさんはどうでしたか?

「うん、凄い人出でしたよ。でも、あんまりヤンキーには会はなかつたかな? 歩行者天国が解除された途端、ブオン! ブオン! ブオォオンン!!! て、現れるんでせうけど」

「キッシッシッシッシ! キッシッシッシッシッシ! キッシッシッシッシ!」

「…うけ過ぎとちやうか」

「バ、ババさん、やつぱ面白いです。ひ、久しぶりにこんなに笑ひました…キッシッシッシ!」

「…ツボがわからん…」

 私は何故かその時、『深淵』の一節を想起したのであつた。

「半ば眠りに落ち込んだ彼の内部を、『明朝は、また別の記憶喪失が、自分を支配しているのではなかろうか。』という恐怖が、電光のように貫き走って、彼は、一瞬慄然と目を覚ました。それは、人が生と存在との深淵に臨んだ際に抱くであろうような根源的畏怖であった。」 by『深淵』大西巨人

小川顕太郎 Original: 2005-Jul-19;
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