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 Diary 2005年7月6日(Wed.)

三歩進んで三歩下がる

 カズ16来店。先日奥崎謙三が死去したが、それに伴ひ多分彼の住んでゐた家が取り壊されるだらうから、といふ理由で、奥崎邸の写真を撮つてきてゐた。写りが悪くてよく分からないが、閉められたシャッターのところに色々と字が書いてある。カズ16によると、“神軍平等兵”とか書いてあるのださうだ。しかし、こんなもの見せられてもなァ。

「デジカメとかで撮つてゐるやつもゐましたよ」

 なんだ、そいつは。原一男ぢやないのか。

 そこに、ハッチー来店。なんと! 今日は6ヶ月振りの英語教室だといふ。果たしてその間、ちやんと独りで英語の勉強は続けてゐたんだらうな、ハッチー。

「いや、その、色々と忙しくて…」

 ダメだな、ハッチー、ダメ。人間の記憶といふのはだなァ、新しい情報はまづ約一ヶ月間、脳の“海馬”といふ所に留まるんだ。その間に、復習をするなりなんなりして、この情報は忘れてはならない大切なものだよー、といふ確認をしないと、不要なものとして捨てられてしまふ。つまり、忘れてしまふんだよ。6ヶ月もほつたらかしぢやあ、三歩進んで三歩下がる、みたいなものだな。最初からやらない方がマシかも。

「そんなこと言はんといて下さい。これからは心を入れ替へて、月に2回は英語教室をする事にしたんですから。それに……ボク、ハッチーぢやなくてハッシーなんですけど」

 あれ? さうだつたッけ? いやー、ハッチーがあんまり来ないんで、忘れてしまつてゐたんだな。海馬が不要な情報とみなしたかな。はは、ゴメン、ゴメン、悪かつたよ、ハッチー。

「……」

 今日も雨だつた。

小川顕太郎 Original: 2005-Jul-10;