無駄遣ひ
テラリー来店。今日はテラリーはオパールで働く日ぢやないので、お客さんとして来店した訳だ。もうすぐゼミの**周年パーティーがあり、それの司会をやらなければならない事になつたテラリーは、フォーマルウェアを着る必要に迫られ、本日生まれて初めてスーツを購入したのである!
「あー、でもこのスーツの値段を知つたら、母親が怒るだらうなァ。そんな高いものを! 無駄遣ひです! ッて」
うーん、でもテラリー、スーツはあんまり安物を着ちやダメだよ。最低限、それぐらゐのものを買はないと。
「さうですよね。大体、ボクより母親の方が無駄遣ひは多いんです。毎日、毎日、なんかしら特売品を買つてくるんです。お菓子とか総菜とか、“半額”とかシールの貼つてあるやつ。で、安かつたから買つた、とか言ふ訳ですが、そもそも要らないものなんだから、どれだけ安くてもそれは全て無駄遣ひです!」
まあ、な。でも要らないものを買つて、そのまま捨てる、といふ浪費王(ベッチ)がオパール周りにはゐるからな。それに較べれば、食べるだけいいんぢやない。
「それに、家には色々と無駄なものが買はれて死蔵されてゐるんです。食器乾燥機とか、たこ焼きを焼く機械とか」
ああ、それは関西ならほぼ全ての家にあるから。私の実家にもあつたし。それより、うちはもつと凄いよ。なんと! フォンデューをする道具が死蔵されてゐるんだ!
「ええ! それは初めて聞きました。それを買つたのは当然…」
むろん、トモコに決まつてゐるぢやないか! 他にも色々とあるよ。
「たとへば?」
うーん、パンダトースターとか。
「パンダトースター?」
食パンを焼くと、パンダの顔が焼き付くんだ。類似品も出回つてゐるけど、一応オリジナル復刻版、らしい。
「それ、いいぢやないですか」
うん。でも我々は食パンを食べないから、使つたことはない。
「使ひませうよ!」
他にも1、2回使つたことのあるものなら、ハンドル式鰹節削り器、ヨーグルト製造器、10年日記(一月分もつけてゐない。むろん、すでに10年は過ぎてゐる)、様々な健康器具…。
「う〜ん、トモコさんは“買ふ”といふ行為自体が好きなんでせうねェ。」
いや、トモコに言はすと「まづ手に入れなくては何も始まらない」といふ事らしいよ。私にはこれらの買ひ物で一体何が始まつてゐるのやら、皆目見当がつかないのだけれど。
あ、テラリー、革靴も買はなきゃダメだよ。
小川顕太郎 Original: 2005-Aug-26;