京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Diary > 04 > 0913
 Diary 2004・9月13日(Mon.)

NAS は偉い

 ただいまアメリカでは大統領選に向けて大童らしい。今回の大統領選の特徴は、何と言つても反ブッシュの動きだらう。イラク戦争がベトナム化して、反戦・反ブッシュの動きが活発化してゐるやうだ。で、私が個人的に興味を持つてゐるのが、アフリカン・アメリカン(黒人)達の動き。パフ・ダディやラッセル・シモンズなど、ヒップホップ界の大物が大掛かりな反ブッシュ運動を起こしてゐて、ヒップホップスター達を餌に、政治に興味のないファンの連中にも大量に選挙人登録をさせ、とにかくブッシュを蹴落とさうと必死なのだ。「選挙に行かう!」が合言葉で、もちろんこれは「選挙に行つて、民主党のケリーに票を入れて、ブッシュを倒せ」といふ意味である。この動きを、公民権運動以来の黒人の政治意識の高揚化、として高く評価する人も多いやうだ。

 しかし、私自身はこの動きに対しては、チョット距離を置いてゐる。理由としては、まづブッシュもケリーも同じ穴の狢としか思へないこと。公民権運動以来、黒人の政治運動は、民主党と結びついたリベラル派の主導の下に行はれてきたが、この動きが数々の輝かしい成果を勝ち得てきたのは事実だとしても、80 年代以降はマイナス面が強まつてゐるのではないかと思はれること。そして、その延長線上の話だが、黒人の間では「民主党支持が絶対善」といふ雰囲気があるやうで、私はこれが非常に不健康に思へるからである。かういふのは端的にファシズム運動なのだが、アメリカといふ国はファシズム運動が起こりやすい国で、PC 運動なんてその最たるモノだらう。今回の黒人達の反ブッシュ運動も、「黒人同胞は一致団結して!」といふところをやたらと強調してゐるし、選挙に行かない奴や、ましてやブッシュを応援する奴は裏切り者、といふ雰囲気をプンプンとさせてゐる。私は、色々と入つてくる情報から、さういつた雰囲気を感じ取つて、少々暗い気持ちになつてゐたのである。

 ところが、ここにその暗い気持ちを引き裂くやうな爽快なニュースが入つてきた。ラッパーの NAS が、ライブの時に「選挙なんか行くな!」と発言して物議を醸してゐる、といふのだ。NAS 凄い!! やつぱ NAS は天才だ。いちおう、理屈としては、「ブッシュもケリーも同じ穴の狢、どちらも黒人の味方なんかしない」といふのがあるやうだが、きつと NAS は、反ブッシュ運動の持つ不健康さに敏感に反応し、反射的にこれを切り裂く発言をしたのではないか、と思ふ。かういふ行動をとれる人間を、天然…いや、天才、と呼ぶのだ。私は猛烈に感動した。この発言で、NAS は良識派(?)の人々からの猛烈なバッシングにあつてゐるやうで、それまで NAS は「知性派ラッパー」と言はれてゐたのに、今や「無知」「無教養」ラッパーと言はれてゐるらしい。ははは、リベラル派の人間の言ひさうな事だ。

 とにかく私は NAS を熱烈に支持します。もちろん、私とてブッシュは大嫌いだし、次の選挙では負ければいいと思つてゐますが、かと言つてケリーにも何のシンパシーも感じませんし、ケリーが勝つたからといつて、それほど状況は良くなるとは思へません。そんな事より、NAS のやうな存在がゐてくれて良かつた、といふ気持ちの方が強い。NAS のやうな存在こそ、ヒップホップでせう。

 NAS 頑張れ!

小川顕太郎 Original: 2004-Sep-15;