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 Diary 2004・5月24日(MON.)

全体主義への道

 ババさん来店。最近はなんでこんな訳の分からない法案が次々と成立するのか? といふ話をしたりする。

 いま問題になつてゐる著作権の改正もさうだし、健康増進法もさうだ。またババさんによると、青少年にとつて有害なコンテンツの作製を規制する法案、といふのが提出されるとかどうとかいふ事態も起こつてゐるやうだ。この「コンテンツ」といふのが何を指すのかイマイチよく分からないのだけれど、インターネット上のサイトのみならず、映画や小説なんかも入る可能性があるとのことで、さうなれば正に文化管理のナチズム法である。健康や文化を管理・規制する、といふのはつまり、国民の生き方を管理・規制する、といふ事で、これはあまりに露骨な全体主義なのだけれど、なぜこんな事が起こつてゐるのか、といふのが分からないのだ。だつて戦後の日本は、ずつと全体主義反対(ナチズム・ファシズム・スターリニズム反対)でやつて来たのではないのか。それがなんで、最近になつてこんな音を立てて全体主義へと雪崩れ込むやうな法案が次々と成立し、それに対して世間もそれほど騒いでゐないのか。それが、訳が分からない。

 人によつては有事法制なんかもこれに含めるかもしれないが、まァ、あれはあれで問題はあるとは言ふものの、とりあへずは関係ない。ある種の有事法制は国家には必要だし、自衛隊は憲法改正して早く正規国軍になるのが望ましいとは思ふ。そんな事は別に日本が「普通」の国家になるだけだからあまり問題ではなく、本当に問題なのは、国民の生き方を規制・管理しようとする全体主義の方なのだ。軍隊の問題も、全体主義と一緒になつた時に、真にヤバくなる。だから、有事法制反対の声はまだ聞くのだけれど、健康増進法や著作権問題などの全体主義法に対する反対の声をあまり聞かないのは、なんだか本末転倒のやうな気がする。何かの陰謀か?

 とにかくここはひとつ、右翼の方も左翼の方も、慎重に事にあたるべきだらう。歴史が教へる通り、全体主義とは極右と極左を切り落とすことによつて成立するのだから。テレビを見ながらお茶の間の正義に浸つてゐるやうな人々(嫌煙権を無邪気に信じてゐるやうな人々)こそ、全体主義の温床です。

 タカハシくん来店。とうとう念願の『お熱いのがお好き』の DVD を手に入れて、ご満悦だ。よかつたな、タカハシくん、これでお気に入りのジャック・レモンを十分に堪能できるな。「でも、チョット残念なことがあるんです」とタカハシくん。「それは、ジャック・レモンの声を、愛川欽也がやつてゐるんです!」

 うーむ、それは辛いかも。

小川顕太郎 Original: 2004-May-26;