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 Diary 2004・7月8日(THU.)

あなただけ今晩は

cover DVD で『あなただけ今晩は(ビリー・ワイルダー監督・1963 年)を観る。この DVD はタカハシくんに貸して貰つたもの。タカハシくんは「レンタルで借りて観たら、あんまり面白かつた」ので、これと『お熱いのがお好き』の DVD を購入したのだ。確かに、如何にもタカハシくんの好きさうな、ロマンティック・コメディー、であつた。

 ストーリーは、観てゐてこそばくなつて来るやうな、御都合主義で、楽天的で、ロマンティックなもの。もちろん、私もかういつたものは嫌いではない。が、そんな事より、全体の洒落た雰囲気の方に興味を惹かれた。特に、娼婦の人たちのお洒落にはホトホト感心。これは DVD で持つてゐてもイイかもな、と思つた。シャーリー・マクレーンも爆発的にかはいい。チャネリングをばさん、としてのイメージを完全に吹き飛ばす。絶えず煙草をスパスパやつてゐるのが素敵。

 さういへば、娼婦の中に『ファスター・プッシーキャット・キル! キル!』のトゥラ・サターナがゐたと思ふんだけど、気のせゐかな? ジャック・レモンも、ちやんと胸を褒めてゐたし、間違ひないと思ふのだけれど…。(後で確認したら、出演者にトゥラ・サターナの名前があつたので、多分間違ひないと思ふ。それにしても、『ファスター〜』の前はストリッパーをやつてゐた、といふ話だつたけれど、他の映画にも出てゐたんですね。勉強になつた。)

 個人的に興味深かつたのは、ピンプの世界が描かれてゐたこと。ピンプと言へば、70 年代のアメリカで、たくさんの娼婦を使つて金を儲け、自らをゴテゴテと飾り立てるあの男たち、今のブラックカルチャーに多大な影響を与へてゐるあの男たちの事ですが、この映画の舞台は 60 年代初頭のパリ。基本的にこの頃から、ピンプの世界は出来上がつてゐたんだな、と興味深かつた。娼婦たちは自分の身体で稼ぎ、そのお金で自分のピンプを飾り立てる事に血道をあげる。ピンプはとにかくお洒落に、格好よくきめて、常に偉さうに振る舞ふ。絶対に働かない。もちろん、飴と鞭(愛情と暴力)で娼婦を支配して搾取してゐる、といふのが実態ではあるのだが、ピンプは一方で娼婦のアクセサリーである、といふのも一面の真実なのだ。さういつた事を、ある種牧歌的な雰囲気の中で描かれると、なるほど、と理解が一層進んだやうな気がした。勉強になりました。

 それにしても、暑すぎる。

小川顕太郎 Original: 2004-Jul-10;
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