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 Diary 2004・12月30日(Thu.)

ROMANZA忘年会

 本日はROMANZA恒例の忘年会。例年は2次会会場としてオパールを使つてくれるのだが、今年は奇しくも木曜日でオパールの定休日にあたつてゐるため、我々オパールスタッフも忘年会に参加することになつた。場所は四条新町にある「亀厘」。靴を脱いで板間に座り、穴の開いたテーブルに据ゑられた炭焼き器で、さまざまな海鮮や山の幸を焼いて食べる、といふ所である。

「あれ、オパールさん、今日は休み?」と、様々なところから声がかかる。ええ、今日は木曜日で定休日ですから。

「定休日ッて、年末なら普通関係ないんと違ふ? 他の店はみんな無休でやつてゐるよ」

 まァ、うちは周りに流されず、己の信じる道を行く店ですから。

「でも、どの店も凄い人だよ。今日は儲かつたのに」

 私は密かに動揺した。実は大して深い考へもなく、定休日だからと店を休んだのだ。確かに、この店も大いに賑はつてゐる。私は忘年会で散財する費用に、もし店を開けてゐたら儲かつたであらうお金を加へて、自分の損失額を見積もり、暗い気分になつた。多分、今日はアラブのお金持ちあたりがオパールにやつてきて、湯水のやうにお金を使つただらう。私のことを気に入つて、何カラットもするダイヤの指輪をチップとしてくれたかもしれない。しまつた、えらい損をした。私は日本酒をグッと飲み干し、赤ワインと白ワインのボトルを注文した。

 しかし、考へやうによつては、かういふ贅沢な年末もいいかもしれない。快楽は、使つたお金の額に比例する。沢山のお金を使ふほど、多くの快楽が得られるのだ。いや、世の中にはたくさんのお金が入つてくる方が気持ちよく、一寸でもお金を使ふことは苦痛だ、といふ人もゐる、と言はれるかもしれない。が、かういつた人はその莫大なお金を無駄にしてゐる訳で、多額のお金を無駄にする、といふ点で、お金を無駄に使つてゐるのと変はらないのだ。私のやうに、せつかくの儲け話を棒に振つて遊び歩いてゐるのも同様だ。私は眩暈がする程の快楽を味はいながら、ワインを飲み干した。焼酎をボトルで注文する。

 気がつけば、私は見慣れぬカラオケ屋で軍歌を歌つてゐた。みんなグッタリとソファに身を沈めてゐる。一体いまは何時なのだらう。明日は31日、もちろん仕事がある。一年が終はつていく。イラクでの戦争はいつまで続くのだらうか。戦争も、貴重な生命を無駄に蕩尽しつくすといふ意味で、巨大な快楽なのかもしれない。と、フッと思つた。

小川顕太郎 Original: 2004-Jan-1;