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 Diary 2003・11月24日(MON.)

修羅雪姫

 ビデオで『修羅雪姫』(藤田敏八監督・1973 年)を観る。これは、言はずと知れた映画『キル・ビル』の最大元ネタのひとつである。なるほど、復讐に燃える女が一人一人相手を殺していくといふストーリーや、章ごとに映画が分かれてゐること、雪の中での決闘シーン、マンガの挿入、など、共通点がたくさん見つかる。と、いふことは、『キル・ビル』での冒頭のアレは、『修羅雪姫』を意識した伏線か? となれば、当然『キル・ビル Vol. 2』でのユマ・サーマンは最後に……などと、想像が膨らむ。と、まァ、このやうに、どうでもいい楽しみ方も出来るが、さういつた事とは関係なく、なかなか面白い映画であつた。まづは梶芽衣子が格好いいし、70 年代の日本映画が持つてゐたキッチュ & ポップな感覚に、藤田敏八の洒落た感覚がブレンドされて、なんともいへずイイ感ぢが画面に満ちてゐる。主題歌『修羅の花』が流れるラストシーンは格好良さに痺れたし、終はり方にも軽い衝撃を受けた。『キル・ビル』が面白かつた人は、必見の映画だらう。

『修羅雪姫』のビデオは、レンタル屋で置いてある所にはある、といつた程度だが、幸い、現在高槻松竹にて、『キル・ビル』関連の邦画の特集上映を行つてゐるやうだ。それに、12 月 13 日(土)には、みなみ会館にて『キル・ビル』ナイトがあり、そこでも『子連れ狼 三途の川の乳母車』などと共に上映されるやうなので、それらの場所で観ることができる。スクリーンで観ると感銘の深さもまた一入なので、できれば映画館で観る方がよいのではないでせうか。

 ところで『キル・ビル』だが、アメリカでも大ヒットをしてゐるやうで、凄いことだと感心した。なぜなら、こんな趣味性丸出しのユルユル映画が、一部の人々に熱狂的に受け入れられるのならともかく、大勢の人々を面白がらせるといふ事は、タランティーノが確実に時代とシンクロしてゐる、といふことを意味するからだ。選ばれてゐるなァ、タランティーノ。もうスクリーンから、なにやらオーラが、脳天気ともいへる多幸感が溢れ出てゐる。それは、北野武の映画から感ぢるものに近い。それが感ぢられない人は、この映画の良さがちつとも分からないだらうな。ユルユルだし。細部は不整合だらけ、いい加減な御都合主義に満ちてゐる。それは、実は『修羅雪姫』を始めとする 70 年代の邦画プログラムピクチャー群にも言へることだ。だから、『キル・ビル』を楽しめた人は、きつと『修羅雪姫』も楽しめるはずだ、と思ふ訳です。完成度など無視し、快楽原則のみに忠実に作られた、と、思しきグルーブ感を、たつぷり堪能して下さい。

 今日は雨でした。

小川顕太郎 Original:2003-Nov-26;