海を渡つた
中国の書
大阪市立美術館に「海を渡つた中国の書 エリオットコレクションと宋元の名蹟」展を観に行く。これは、米国の有名な書跡コレクター、エリオットさんのコレクションを中心に、宋・元(明・清もあつたが)の名蹟をいくらか加へて行はれた展覧会である。この展覧会の目玉は、なんといつても王羲之の「行穣帖」。日本初公開だといふ。とは言つても、私はそんなに王羲之の書なんて見たことがないので、おお! これがあの「行穣帖」か! といふ感ぢではないのですが。今、なにげなく「王羲之の書」と書いたが、もちろん、王羲之の真蹟はひとつも残つてゐない。「王羲之の書」と言はれるものは、全て誰かが王羲之の字を書き写したもの。とはいへ、例へばこの「行穣帖」など、ソウコウテンボクといふ、字の上に薄い紙を置いて、字を縁取つて、中を塗る、といふ方法で書かれたらしく、かなり正確に王羲之の書蹟を再現してゐるといふことだ。うーむ、なるほど…。数々押された所蔵印がまた格好いい。って、いふか、黄庭堅にしろ、米元章(A.K.A ベイフツ)にしろ、格好良すぎ! やはり本で見るのとは全然違ふ。少し黄ばんだ紙に、黒々とした墨のあと、赤々とした印のあと。生々しい感触が伝はつてくる。これを、ソウルが伝はつてくる、といふのではないか…。などと感動してゐるうちに、アッといふ間に時間は過ぎて閉館時間。しまつたあ! 地下でやつてゐる日本篆刻展にも行かなければならないんだつたあ! 私とトモコは走つた。「すいません! ちよつとだけ!」と叫びながら、会場に走り込む。……あつた! テラダさんの作品。準大賞受賞作。5 秒ほど作品を睨み、特別展観のコーナーに走る。西冷(ほんとはサンズイ)八家と西冷(ほんとはサンズイ)印社創始者たちの作品の数々。大急ぎで目を走らす。あわわわわ、なんか凄いぞ…。すでに会場は閉まり、警備員や係員の人の冷たい視線が痛い。仕方なく、トモコと共にそこを出る。あー、疲れた。
雨が降つてゐたとはいへ、お客さんが少なすぎるやうな気がした。ま、その方が、見やすくていいんですが。とはいへ、素晴らしい作品の数々。なのでオススメ。
寝不足で、頭がボーっとします。
小川顕太郎 Original:2003-May-16;