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 Diary 2003・3月21日(FRI.)

反戦の理由

 アメリカ国内でも、反戦運動が盛り上がつてゐるやうですね。本日はサンフランシスコで大規模な反戦デモがあり、1000 人以上の逮捕者が出たとか。頑張れ! と、思はずエールを送りたくなります。

 ところで私が注目してゐるのは、アメリカのヒップホップ界の動きです。ヒップホップ界では、デフジャムの首領ラッセル・シモンズが率先して反戦運動を進めてゐるやうです。ラッセル・シモンズは、ブッシュ大統領に書簡を送つたりしてゐるやうですが、彼の主張、といふか反戦の理由がいいんですね。私も大いに共感できる。彼の言つてゐるのは、要するに「戦争に使ふ金があるなら、国内の貧困対策に使へ! 国内に問題は山積みやろ。それを優先しろ!」と言ふことです。常にアメリカ国内に於ける黒人の問題を考へてきたラッセル・シモンズの面目躍如、と言つたところですね。

 実はこのラッセル・シモンズの主張は、伝統的なアメリカ保守派の考へかたなのです。アメリカは世界の警察官なんかにならんでいい、アメリカは国内のことさへちやんとやつてゐればいいんや、といふ考へ方です。ちなみにこれに対して、アメリカは世界中に自由と民主制をもたらすんや! と主張して、世界各国に軍隊を派遣・駐留させるのが進歩派の考へかたです。イラク侵攻も、基本的にはこの進歩派の考へかたに立脚してゐます。危険な独裁者を倒し、世界に平和な民主制をもたらす、といふ考へです。

 で、湾岸戦争の時にも、国内が戦争支持で染まつてゐるなか、伝統的な保守派の考へかたに立脚して敢然と反戦を唱へた人がゐました。パット・ブキャナンです。ゴリゴリの保守派ゆゑ、マスコミから右翼と言はれて嫌はれてゐた人です。この人の主張もいいんですね。「なんで石油会社の金持ち連中の利益のために、わしらの子供が兵隊にとられて、死ななあかんのや!」と言つたのです。これは、今回の戦争にも十分あてはまりますね。実際、今回の戦争ほど、露骨に一部の金持ち連中の金儲けのために行はれる戦争も珍しい。ブッシュ一族と、その支持者であるテキサスの石油会社の連中のため、イラクにイチャモンをつけて油田を押さへやうといふ意図が丸見へです。

 また、副大統領のチェイニーの関連会社の「ハリーバートン」「ブラウン & ハート」が、今回も兵站に関する受注を独占してゐるので、戦争が起これば大儲けできるやうになつてゐます。まつたく、「なんでブッシュとその仲間の金儲けのために、一般兵士が死んだり、税金が使はれなければならないんだ!」ですね。

 反戦には様々な理由があるでせう。私は、「戦争は悪だから」とか「平和は尊いから」「戦争で死ぬ人たちが可哀想だから」といふ抽象的な理由では、ピンとこないんですね。でも、「なんでアメリカの利益のために、おれらが血税を絞られなあかんのや!」といふのなら、大いに頷けます。ふざけんな! 馬鹿野郎! って感じです。

 以上のやうな理由から、私も今回のアメリカのイラン侵攻に反対です。さらに、同じやうな理由で反対してゐるラッセル・シモンズたちを支持したいと思ひます。ピース。

小川顕太郎 Original:2003-Mar-22;