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 Diary 2003・12月1日(MON.)

旅立ち

 ノガミくん & ジュリさん夫妻来店。ノガミくんは例によつて支離滅裂な話を繰り広げてゐる。まァ、いつもの事だと思つてゐたのだが、どうやら今日は少し事情が違つたやうだ。それはジュリさんが「ちやんと言ひーな」と、何度も叱咤してゐたからだ。

「いやー、このあいだ白石かずこに会つて」

「何言つてんの! ちやんと言ひ」

「あ、トモコさん、いくつやつた?」

「なんやそれ、ほら、ちやんと!」

「うーん、スーパーカブいらへん? 5 万円くらゐで売るけど」

「いい加減にし!」

 と、結局ジュリさんが諦めて話してくれたのによると、なんと! ノガミくんは明日から京都を離れ、東京に行くのださうだ。

「いや、違ふ。オレは浜松に行くんや。ヤマハの研究に行く。」

「何言つてんの! 浜松には寄るけど、目的は東京でせう。」

「いやいや、東京にも行くけど、目的は浜松。そこでヤマハと日本のプチブルの因果関係を調べるんや」

「…浜松にはこの人の親戚がゐるから、そこに寄つてから東京に行くの。何と言つてもスーパーカブで東京まで行くから、途中で休まないと」

「さうやねん! スーパーカブで行くねん。あー、名古屋くらゐに友だちを作つてたら良かつた。」

「とりあへず 5 年ほど京都を離れて、その間に映画の方を何とかする、と。ね!」

「うーん…」

 なるほど。で、ジュリさんはもちろん…

「もちろん! 京都に残つて来年から事業の新展開よ」

 やはり。でも 5 年とは、結構長いやうな。

「でもー、多分しょっちゅう帰つて来るだらうし…それにこの人、むかし家出したものの、三日で帰つてきたことあつたし。」

「あー、あつた、あつた! ルソーの『告白』を読んで家出したものの、三日で帰つて来た、確かに。ハッハッハ! あー、なつかしい。あの時はコンビニの倉庫で寝てんで、和歌山の。」

 うむ、とにかく、ノガミくんもとうとう勝負をかける、といふ訳だな。それは楽しみです。なんにせよ、身体には気をつけて行つて来て下さい。そして京都に帰つて来た折りは、オパールに寄つて下さいね。

「うーむ、夜明けとともに出発か…」

 12 月に入つたのに、暖かい一日であつた。

小川顕太郎 Original:2003-Dec-2;