英雄
MOVIX に映画『英雄』チャン・イーモウ監督を観に行く。一度観に行つて満席で入れずケチがついてゐたせゐか、黒人がひとりも出てゐないであらう事から私の中の期待値が低かつたせゐか、とにかく予想をはるかに上回る素晴らしい作品であつた。現時点で、私の本年度ベスト作品、か。この日記を読んでゐる全ての人に、強力にオススメしたい。
薦めるからには、ネタバレを防ぐためにあまり詳しいことは書けない。…語りたいことはいくらでもある。でも、書けない。……みなさん、早く観に行つて下さい。
で、仕方ないから、言はずもがなのお節介を書いておくと、まづ、この映画はカンフー映画ではない。カンフー映画だと勘違ひして、カンフーアクションのみを求めて観にいくと、些かガッカリするかもしれない。とはいへ、アクションシーンがイマイチなのでは全くない。逆に、非常に素晴らしい。素晴らしすぎると個人的には思ふ。『グリーン・デスティニー』に於ける竹藪での戦闘シーン、あの名シーンを何倍もの規模で展開させたのが、この『英雄』のアクションシーンなのだ。私の言ひたいのは、『英雄』はカンフー映画のやうにカンフーアクションを主眼に据ゑてゐるのではない、といふことだ。この映画は武侠映画であり、武侠世界を描くために非常に効果的にアクションシーンが撮られてゐる。その語り口は、最新 CG 技術を完全に自家薬籠中のものとして白髪三千丈的シナ美学を描ききつたもので、映画そのものの規模の雄大さと相俟つて、観るものを圧倒する。あるいは、酔はせる。やつぱシナって凄いぢやん、と私は感動したのでした。
しかし、ここまでこんなことを書いてきて、今更こんなことを言ふのもなんだが、あまり期待し過ぎて映画館に向かふのは、良くない、かもしれない。やはり私のやうに「あー、『ワイルドスピード X2』が早く観たいなー」とか思ひながらスクリーンに向かふのが良いと思ひます。
では、再見。
小川顕太郎 Original:2003-Aug-22;