映画の見方
昨日は映画の日であつた故、私が 1000 円で『ブラック ダイヤモンド』を観てきた。今日はレディースデイであるので、トモコが 1000 円で『ブラック ダイヤモンド』を観てきたのであつた。トモコ曰く「なんか、凄いことになつてゐたわ、客席が」。客席では、オタク系(ジェット・リーのファン)と B-BOY & GIRL 系(DMX のファン)、その他が、はつきりと分かれ、賑はつてゐたさうだ。
確かに、この映画はカンフー・ヒップホップムービーであるので、2 種類の強烈なファン層を引きつけるのであらう(むろん、これらに関係ない、純粋な映画ファンの人たちもゐる)。そして、この 2 種類の人たちは、全く違ふやうに、この映画を観てゐるやうなのだ。
オタク系の人たちは、カンフー映画だと思つてこの映画を観てゐるので、いささか物足りないやうな顔をしてゐる。カンフーアクションは、香港のそれに較べれば全くなつてゐないし、ジェット・リーも冴へない役柄だからだ。
それに対して、B-BOY & GIRL 系、といふかヒップホップ・ブラックミュージックファン、要するに私とトモコにとつては、これはブラックムービーであるので、十分に満足できる内容であつた。はつきり言つて、我々にとつてこの映画の主役は DMX であるので、「リー・リンチェイが物足りなかつた…」といふ意見はちつとも理解できない。ジェット・リーは「準主役」としてちやうど良かつた、と思ふ。それよりなにより DMX である。ドラッグ・オンである。ゲイブリエル・ユニオンである。アンソニー・アンダーソンである。ブラックムービーとは、たぶん黒人の映画監督が撮つた黒人の世界を描いた映画、といふ意味だらうから、この映画は厳密にはブラックムービーとは言へないであらう。しかし、我々にとつては、ブラックムービーとは、黒人の美学を描いた映画、であるので、この映画は十分にブラックムービーなのである。とにかく DMX は良かつた。少しばかり演技が生硬な所もあつたけれど、それを補つて余りある存在感があつた。その立ち居振る舞ひ、喋り方、顔の筋肉の動かし方、服装、などに、美学が横溢してゐた。我々はボギーを観るかのやうに、DMX (とその仲間たち)を観たのであつた。
さて、では実際どのやうに私がこの映画を観てゐたのか、少し再現してみやう。
「…お! DMX の履いてゐる靴はティンバランドかな? ズボンは…ショーン・ジョンか。なるほど、なるほど、格好いいなあ…あ! この曲、知つてゐる! えええええと、何だつたかなあああああ、あ、ジェイ・Z の声だ、つまり…さうか! 『ニガープリーズ』だな! …この曲は、どのアルバムに入つてゐるんだつたつけ…」
などと考へてゐるうちにドンドン場面は進んでしまう。でも、ストーリーが単純だから、問題ないのでした。ははは。
しかし、このやうに書けば、ブラックムービーに興味のない人は、観にいかないのではないだらうか? ここで、ババさんの意見をきく。「普通に、映画としてみて、バチグンです!」。と、いふことです。みなさん、観に行つて下さいね。
小川顕太郎 Original:2003-Apr-4;