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 Diary 2002・10月16日(WED.)

Dolls

 北野武最新監督作『Dolls』を、MOVIX に観に行く。最初に断っておくと、私は「北野武擁護派」である。なぜわざわざ「擁護派」などと名乗っているかというと、私がリアルタイムで武の映画を追いかけるようになってから、それは『キッズ・リターン』からなのだけれど、常に公開時には悪評しか私の耳にはいってこないからだ。もちろん私は、『HANA-BI』にはちょっと首を捻るものの、どの作品も素晴らしいと思っている。が、メディアでは常に悪評紛々。そうなると、私としては「北野武絶対支持!」と叫びたくなってくる。前作の『BROTHER』に至っては、私にとっては奇跡のような傑作なのだけれど、ほとんどゴミのような扱いをメディア上で受けていた。ここで言うメディアとは、テレビを除く。テレビは宣伝しかしないので、批評には無縁だからだ。

 で、そのような「北野武擁護派」の私であるが、しかし、今回の映画では『HANA-BI』に次いで首を捻ってしまったのであった。うーん。

 まず、ヨージ・ヤマモトの衣装がいただけない。はっきり言うが、ダサすぎる。映画では、男女の乞食が日本中をさまようのだけれど、こいつらが出てくるたびに衣装替えをしている。なんじゃそりゃー! って感じだ。もちろん、武は安易なリアリズムを拒否している訳だし、それはいいのだが、なんでヨージなのか。ヨージは選択ミスだろう。なんというか、80 年代の軽薄な業界ムードが画面に漂う。あらまー電通ですかー、ディスカバージャパンですかー、ってな感じだ。前作の『BROTHER』では、ヨージの服ははまっていたのだが…。

 あと、話が分かりやす過ぎる。限りなく、俗情との結託に近い、と思う。私が『HANA-BI』に批判的なのも、限りなく俗情との結託に近い、と思うからだ。余命いくばくもない不治の病に冒された妻のために、警察官が銀行強盗をして、そのお金で死出の旅に出る、という話。これは、ああいい話だよね、という処に治まってしまう危険性がある。分かる、分かる、同情できるよね、という処に。それでは、ダメだ、と私は思う。この『Dolls』も、そういう危険性が多分にあるのではないか?

 しかし、実はこの点に関しては、ちょっと態度を和らげた。映画を観たのち、オパールに行って、ババさんと『Dolls』について喋ったのだが、色々と喋っているうちに、そんな単純な構図には収まりきれない変な細部が結構あることに気が付いたからだ。うーん、難しい。

 ま、という訳で、みなさんも自分の眼と頭で判断を下すために、是非観に行ってください。北野武擁護派からのお願いでしたー。

小川顕太郎 Original:2002-Oct-17;