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 Diary 2002・10月1日(TUE.)

台風か

 朝から雨である。いや、正確に言うと私は昼過ぎに起きて、窓の外に激しい雨音を聞いたのだから、昼にはすでに雨だった、というべきだろう。なんにせよ雨から私が真っ先に連想する事は、お客さんが来ないのではないか、ということだ。「土方殺すには刃物はいらぬ」という言葉も浮かぶ。別に私は現在土方をしている訳ではないが、そういう言葉が浮かぶ。また「風が吹いたら遅刻して〜、雨が降ったらお休みで〜」という、カメカメハの歌の一節が頭の中に流れる。そして、雨でも休めない、日本人の自分の身を憾みながら、しぶしぶベットから這い出すのだ。

 夕方に店に行くと、その頃にはすでに雨はあがっていたのだが、案の定、暇だった。

 ユキエさんが言う。

「戦後最大の台風がやってきているらしいですよ。」

 へー、それは楽しみ。いつ関西には来るの?

「それが関西には来ないらしいんです。」

 うーん、それは残念。

「でも関東をもうすぐ直撃するはずです。」

 ほー、それは大変だ。しかし、台風にまで避けられたのか、うちの店は、と、一人しかお客さんのいない店内を見回しながら、思う。そして、自分の手で軽く自分の額を叩く。あ、いかん、いかん。脳内の神経細胞という奴はとても弱く、軽く手で頭を叩くだけで、数千の脳内細胞が死ぬそうだ。この話をトモコにしたところ、面白がって、ことある事に私の頭を叩こうとするようになった。何を考えているのか。夫婦間においては、先に痴呆化した方が勝ちなんだぞ。将来苦労するかもしれないのに、分かっているのだろうか。

 こうやって我々は、お互いの頭を叩きながら、痴呆化競争において、相手にペナルティを与え続けている。最終的に勝つのはどちらか。長い闘争である。

小川顕太郎 Original:2002-Oct-2;