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 Diary 2001・7月28日(SAT.)

金持ちサラリーマン

 副島隆彦の新刊「あなたが『金持ちサラリーマン』になる方法(三笠書房)を読む。題名から分かるように、ストレートにサラリーマンに向けて書かれた本である。「金持ちサラリーマン」とは何か? それは「自分のサラリーマン生活を、精神的にも肉体的にも金銭的にも自由に楽しむことのできる人」のことである。金持ちのボンボンが、たまたまサラリーマンをやっているのは違う。要するにサラリーマンの勝ち組のことだ。サラリーマンの勝ち組になる方法とは…。

 こういった本は、自己啓発書とでもいうのですかね。この本の後ろにも、同じ出版社の他の本の広告が載っていて、それがみんな「仕事ができる人できない人」「相手を思いのままに『心理操作』できる!」「考える力やり抜く力私の方法」などといったものばかり。必ず目次が載っていて、「『いい人』は無能の代名詞である!」「会社の反逆児になるくらい仕事に賭けろ!」「『イザとなったら守ってくれる』は錯覚である!」など、もうそれだけで内容が分かってしまう。

 サラリーマンの人たちは、本当にこんな本を買っているのでしょうか。とにかく厳しい事が叱咤激励調で書いてあり、読めば「よし! 明日から仕事頑張ろう!」と思える仕組みになっているんでしょうな、多分。でもそういった気持ちは長続きしなくて、また似たような内容の本を購入・読了して、「こんな事では駄目だ! 今度こそは仕事を頑張ろう!…」となって…。

 副島隆彦のこの本も、いっけん同様の本なのですが、やはり副島隆彦。彼のシンプル且つクリアな世界観がバシッと現れているので、私のようなサラリーマンじゃない人間にも楽しめます。

 例えば、「『負ける戦い』はしてはならない!」という鉄則が出てくるのだけれど、このような鉄則それ自体はそれほど珍しいものではないし、それだけ聞いても、ふーんそんなもんかね、といった程度のものでしょう。が、副島隆彦の場合は、この鉄則を戦後の日本の国家戦略にあてはめながら説明します。

 大東亜戦争でアメリカに負けた日本は、戦後ずうっとアメリカに実質的に支配されています。はっきり言って、今の日本がアメリカに勝つことなどありえません。だから我々のすべき事は、絶対に負けないようにする、ことです。吉田茂以来、日本は押しつけられた平和憲法を逆に利用したり、社会党や学生運動で暴れる学生を利用しながら、のらりくらりとアメリカの支配をかわし続けてきました。決して勝ってはいけない。80 年代に一度、貿易戦争で勝ったのですが、案の定逆襲され、90 年代の金融戦争で大敗し、戦後我々(の親達)が血のにじむ思いで稼いだお金をほとんどアメリカに吸い取られてしまいました。おかげで現在は出口の見えない不況で、オパールの経営も危ないというざまです。「勝とうとするな。ひたすら負けまいとせよ。」

 このように説明されると、いっけん陳腐な鉄則も、胸に響きますね。

 単なるサラリーマン向けの自己啓発書に終わらず、深い内容を持った良書だと私はみたのですが、「単なるサラリーマン向けの自己啓発書」を読んだことがないので、これはいい加減な感想です。あ、もう朝だ…。

小川顕太郎 Original:2001-Jul-29;