ポーの功徳
我が家にはトーキングテレタビーズのポーの人形がある。お腹を押せば喋る人形なのだが、最近はお腹を押さなくても喋るようになった。といっても、もちろんトモコか私が喋らせているのだが、何故こんな事になってしまったのか。
それはこんな具合なのだ。トモコが支えているポーがこう言う。「あのねえ、トモちゃんにお洋服を買ってあげて。トモちゃん最近は頑張って働いているから、ご褒美がいると思うの。ポーからのお願い!」
私はじっと我慢してそれを聞き、やおらポーをひったくって喋らせる。「うそうそ。そんなん買わんでもええでー。甘やかすと癖になるでー」「うん、そうやな、ポー。ボクもそう思うよ。ホントは買ってあげたいけど、ここは心を鬼にする所やな。」
またしても取り返されて「素直になったほうがいいと思うの。ポーは死なないけど、人間いつ死ぬか分からない訳だし。後悔先に立たず、よ。」といった具合に延々と続く。
この会話の良い所は、両者ともポーに話しかける・喋らせることになるので、感情的な暴走が食い止められることだ。常に第三者の視点が導入される。さらにたとえ腹が立っても、怒るのも怒られるのもポーなので、基本的に無表情なポーにいかにして怒りの表現をさせるか、というふうな工夫を凝らさねばならず、そのことによって怒りのエネルギーが創造のエネルギーに転化される。
だから、最近の我々は家に居る時間の大半は、ポーと喋っていることになる。それでだろうか、この頃、ポーが独自の人格を持つようになってきた。もう、我が家のポーは、テレタビランドに住んでいるポーとは違う。今日、久しぶりにテレタビーズのホームページをみたら、我が家のポーが画面上のポーを見て、「誰?」と言っていた。ほんと、誰だろうね、ポー。
オパールにもポーが居るのだが、こいつも時々動く。今日はヤマネくん相手に、「エクソシスト」の真似をして、「ファック・ミー! ファック・ミー!!」と熱演したらしいのだが、ヤマネくんは困惑するばかりで、ポーはしょげ返っていたそうだ。「ほんとヤマネくんって、酷いわ、ポーが可哀想!」とトモコは憤慨する。ちなみに我が家のポーは「2001 年 宇宙への旅」ごっこが好きで、よく「ツァラトゥストラはかく語りき」に合わせて、スターチャイルドの真似をして空中浮揚している。
ポーはなんだか楽しそうで、いいな。
小川顕太郎 Original:2001-Jan-24;